皮膚を知り尽くしているから、できること。

環境因子による角膜上皮ダメージの検証とその防御評価代替法の可能性

A possibility of a reconstructed ocular epithelial model as an alternative method for preventive effects against damage initiated by environmental stimuli

【目的】眼は、角層バリア機能をもつ皮膚と異なり、角膜上皮細胞が構築する角膜が存在している。角膜は乾燥や太陽光線など環境因子に曝されることにより、ドライアイや雪目などの眼組織の炎症を発症する。

 

そこで、本研究は各種の環境ストレス曝露時のヒト角膜上皮モデルSkinEthicTM HCE (HCE) の角膜上皮細胞の応答性を明らかにし、角膜ケア成分の有用性素材の評価を可能にするin vitro評価法の構築を目的として実施した。

 

【方法】太陽光線に含まれる各波長域の光・低湿度環境・汚染空気を環境因子として選択し、HCEの角膜側から曝露した。角膜細胞のストレス応答マーカーとして、ROS生成レベル、カルボニルタンパクレベル、マトリックス分解酵素 (MMPs)、炎症因子および細胞生存率の挙動について検討した。

さらに、有用性評価については、角膜保護成分によって環境因子が惹起する作用を抑制するか検証した。

 

【結果】曝露したすべての環境因子はHCEに酸化ストレスを誘導した。

さらに、ドライアイのモデルとして考えられる低湿度環境曝露したHCEの酸化ストレスは、角膜保護成分を配合する点眼薬によって抑えられた。

 

【考察】眼のトラブルは眼組織の様々な部位で発症するが、この発症要因として加齢や生活習慣などの内因性のROS亢進が報告されている。

さらに、環境因子は、HCEの酸化ストレスを惹起したことから、環境因子により惹起される角膜の酸化ストレスが原因となり、眼組織全体のトラブル発症を助長する可能性が示唆された。

本検討より、角膜上皮モデルSkinEthicTM HCEを用いることで、環境因子により誘導される酸化ストレスに対する点眼薬等のin vitro有用性評価の可能性が明らかとなった。

角膜上には涙およびマイボーム腺由来の脂質が存在することから、これらの成分を再現した人工涙液を用い評価システムのブラッシュアップを検討したい。

 

発表者名:株式会社ニコダームリサーチ 推進事業室 井筒 ゆき子

日本薬学会第138年会

発表番号:26PA-pm284

3/26 PA会場 午後、284番のパネル

HP:http://nenkai.pharm.or.jp/138/web/