皮膚を知り尽くしているから、できること。

014 “なぜ効く?”を解き明かす、オミクス解析と皮膚科学

2025.8.8

様々な分野の研究で用いられる「オミクス解析」には、いくつかの種類があります。

皮膚機能に関連する評価・解析を主軸に、「オミクス解析」をまとめました。

 

▼目次


“オミクス(-omics)”の意味

まず、“オミクス(-omics)”とは、「網羅的」「包括的」「全体的」に対象を解析する研究分野を示します。

1990年代~2000年代頃から、活用が進められ急速な進歩を続けている解析技術です。

オミクス解析の種類と特徴

◦ゲノミクス (Genomics)

生物の持つ遺伝情報(ゲノム)全体を網羅的に解析する分野です。

DNA配列、遺伝子多型(SNPなど)、遺伝子構造変異(コピー数変異など)の解析が主な解析対象です。

 

主に、薬物による皮膚障害の発症予測や、皮膚がん発症や進行にかかわる遺伝子変異の同定などに応用されます。

トランスクリプトミクス (Transcriptomics)

特定の状況下※で細胞が発現しているRNA(主にmRNA)の総体(トランスクリプトーム)を網羅的に解析する分野です。

DNAからRNAへの転写される遺伝子の種類・量を解析することで、細胞のリアルタイムでの機能や状態を把握できます。

 

主に、皮膚の炎症メディエーターや免疫関連遺伝子の解析や、皮膚老化や損傷によって変化する遺伝子発現パターンの特定に応用されます。

 

※一例として、皮膚に炎症が起きている状況や、薬剤・化粧品等を適用する状況などが挙げられます。

プロテオミクス (Proteomics)

細胞や組織に存在するすべてのタンパク質(プロテオーム)を網羅的に解析する分野です。

 

タンパク質は最終的な機能を発揮する分子であり、細胞の構造、シグナル伝達、代謝などあらゆる生命活動に直接関与しています。


主に、乾燥肌や肌老化におけるタンパク質の解析と改善メカニズムを予測や、薬品での皮膚治療効果を評価するバイオマーカー(タンパク質)の探索に応用されます。

メタボロミクス (Metabolomics)

生体内の代謝経路や生理的状態を最も直接的に反映すると考えられる代謝物質(アミノ酸、糖、脂質など)を網羅的に解析する分野です。

ゲノム、トランスクリプトーム、プロテオームが「可能性」や「潜在的な機能」を示すのに対し、メタボロームは「現在の状態」をより明確に示します。

 

主に、皮膚のバリア機能や炎症に関連する代謝物の変化や、NMFなど皮膚機能に重要とされる代謝物質の解析に応用されます。

各オミクス解析のまとめ

上で紹介したオミクス解析の特徴をまとめると、下表のようになります。

オミクス解析 解析対象 主な情報 活用例 皮膚機能の表し方
 ゲノミクス DNA 遺伝子の配列、変異、多型 疾患感受性、薬物反応性の遺伝的背景 潜在機能(皮膚機能の設計図)
トランスクリプトミクス RNA(mRNA) 遺伝子発現量 遺伝子発現の活性化/抑制、疾患の病態理解 皮膚機能の実行計画(何を作ろうとしているか)
プロテオミクス タンパク質 タンパク質の発現量、修飾、機能 実際の細胞機能、シグナル伝達、治療標的の探索 皮膚機能の部品となるもの(実際にどのように機能しているか)
メタボロミクス 代謝物質 低分子代謝物の種類と量 代謝経路の変化、バイオマーカーの探索 皮膚での現在進行形の変化(機能した結果どうなったか)

これらのオミクス解析は、それぞれ異なる階層の情報を与えるため、単独で用いるよりも、複数のオミクスデータを統合して解析するマルチオミクス解析を行うことで、メカニズムや状態をより深く・多角的に捉えることが可能になります。

【受託試験】DNAマイクロアレイ

三次元培養表皮モデルや、表皮細胞・線維芽細胞にサンプル適用後、RNA抽出し、遺伝子の発現変動を捉えることで、皮膚機能につながる遺伝子発現を網羅的に解析します。

当社のDNAマイクロアレイでは、皮膚に関連する約180の遺伝子に特化し、遺伝子発現変動を捉えるため、原料・素材の皮膚に対する有用性ポテンシャルを網羅的に探索したい方に支持されている評価法です。

【受託試験】パスウェイ解析

当社では、皮膚に対するサンプルの作用のメカニズム網羅解析として、プロテオーム(プロテオミクス)解析を活用したパスウェイ解析を受託しております。

当社の解析サービスにおいては、プロテオーム解析で同定されたタンパク質変動を捉えた後、パスウェイ解析によりタンパク質同士の相互作用を網羅的に可視化することで、サンプルによる複数の作用メカニズムをシミュレーションしています。

サンプルレポートも提供可能ですので、ご興味のある方はぜひお問合せください。

 

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【受託試験】マイクロダイアリシス法を用いたex vivo評価

さらに、サンプル使用による皮膚への浸透性と有用性をより実験的に評価する場合は、

マイクロダイアリシス法を用いたex vivo評価を実施できます。

摘出後数時間以内の生体反応が残る新鮮な摘出皮膚を使用し、サンプル使用による皮膚内での代謝産物を実験的に定量します。これにより、皮膚への透過性とサンプルの皮膚に対する有用性メカニズムを同時評価できます。

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